目に入れても痛くない話
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
2006年 1月 グラフ旭川2月号市民の健康ガイドに「目に入れても痛くない話」
が掲載されました。

1.はじめに

 私には「目に入れても痛くない」ほど可愛がっているものがあります。
大学1年生の時からですので、もうかれこれ24年の付き合いになります。
それは、コンタクトレンズ(CL)です。

 私は強度近視でCLなしでは人前には出たくないですし、CLの恩恵に
あずかっている者の一人ですが、そのありがたいCLでトラブルを起こす方が
非常に多いので、正しく使用していないために危険にさらされている方には、
ついつい辛口になってしまう傾向があります。

 CLに対する私の考え方は、「CLはあくまでも目にとっては異物であり、
きちんと使用しなければ目に害を及ぼす危険性のあるもの」ですが、
「きちんと使用すれば安全であり、視力の悪い人にとって非常に便利で
ありがたいもの」というものです。

2. コンタクトレンズの始まり:豆知識

世界で最初にCLを発明したのはレオナルド・ダ・ビンチと言われています。
1508年に大きなガラスボウルに水を入れて、
水面に顔をつけてボウルの中の水を通して外を見る実験をしたと
されています。

一方、日本でのCLの始まりは、
日本医史学会評議員 奥沢康正先生によりますと、
「史料から確認できないが、豊臣の残党狩りを逃れるために、
魚のうろこを角膜上に載せて盲人を装ったのがはじめとされる」
とのことです。

眼鏡とは違う方法で良く見えるようにしようという発想と
目の中にモノを入れて見えなくしてしまうという全く逆の発想。

モノの始まりって興味深いですね。

納豆を最初に食べた人って勇気がある、って話がありますが、
最初にCLを入れた人も勇気ありますよね。


3. CL の種類とその特徴

A.ソフトコンタクトレンズ
(1)1日使い捨てレンズ

1日使ったら捨ててしまいますので、レンズに汚れがたまる心配が
ありません。また、洗浄・消毒などのケアが不要です。
アレルギー性結膜炎にも対応しやすいという利点があります。
ただし、毎日使う場合は、コスト高になってしまいます。

(2)定期交換型使い捨てレンズ

1週間、2週間、1ヵ月で交換するタイプのレンズです。
このうち1週間型は1週間、目につけたままのタイプのレンズで、
トラブルが多く、お勧めしていません。
定期交換型は洗浄・消毒などのケアが容易で、1日使い捨てよりも
コスト面で有利です。

(3)通常のSCL(コンベンショナルレンズ)

洗浄・消毒などのケアが面倒です。
どうしても汚れてしまいますので、なるべく早めの交換が必要です。
アレルギー性結膜炎の強い方には使えません。

B.酸素透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)

安全性には、最も優れています。ただし、慣れるまでに時間がかかり、
異物感のため装用できない方もいらっしゃいます。
近視度数の強い方、1日の装用時間の長い方にお勧めしています。


4. 眼鏡との併用

CLを使用する方に(既に使用している方にも)強調したいことは、
「眼鏡と併用しましょう」
ということです。

CLは角膜に直接載せますが、角膜に必要なものは、酸素です。
角膜は涙から酸素という栄養を受けていますので、
正しいフィッティングで、酸素透過性の優れたレンズを、正しい使用法で
装用しなければなりません。

起きている時間帯に眼鏡をかけて、
CLをしていない状態の時間を持つようにしましょう。
お勧めは、お家に帰ったら眼鏡にすることです。

CLは 眼鏡の代わりに使えるものですが、
    眼鏡の替わりに使うものではありません。


5. 角膜内皮細胞

不適切なCLを長期に使用した場合には、角膜障害を起こしてしまう
ことがわかっています。角膜内皮細胞は角膜の透明性を保つために
重要な働きをしていますが、加齢とともに減少し、恐ろしいことに
CLの誤った使用によっても減少し、一度減少した細胞は再生しないと
いうことがわかっています。透明な角膜を一生守るためには、正しい
CLの知識が必要だと考えております。

図1は72歳男性の白内障手術前の角膜内皮細胞です。72歳ですが、
角膜内皮細胞数は2769で、異常ありません。

一方図2は、SCLを30年間使用している56歳女性の角膜内皮細胞です。
一つ一つの細胞が大きくなっており、角膜内皮細胞数も981にまで
減少しています。これ以上細胞が減少してしまいますと、角膜は
透明でいられなくなる怖れがあります。

当クリニックでは、CLご希望の方、今までCLを使ってらした方には、
角膜内皮細胞検査を行います。また、ご自身の角膜の細隙灯顕微鏡
画像もお見せしますので、ご一緒にどのようなCLが目に適しているのか
相談させていただきます。

図1:72歳男性の角膜内皮細胞
72歳ですが、小さい細胞がつまっており、
細胞数は2769で、異常ありません。
図2:56歳女性の角膜内皮細胞
長年のソフトコンタクトレンズ装用により、
一つ一つの細胞が大きくなっており、
細胞数も981にまで減少しています。

6.さいごに

今や多くの人がCLを装用し、その数は1400万人を超えると
言われています。しかし、不適切な使用により、CL装用者の
7〜10%に眼障害が発生していると報告されています。

大切な目です。
CLは「目に入れても痛くないように」可愛がって下さい。

2006.1.26 記