「肝心なところが見えなくなる病気」
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
2015年 4月 グラフ旭川5月号市民の健康ガイドに
      「肝心なところが見えなくなる病気」が掲載されました。

「肝心なものは目には見えないんだよ」
作家のサン=テグジュペリは「星の王子さま」の中で、
私たちに大切なものは何かを教えてくれました。
今回は肝心なものは目には見えない、といった メルヘンチックな話ではなく、 「見ようとするところが、見えづらくなる」加齢黄斑変性のお話をー。

網膜の中心にある黄斑

 目の奥には網膜と呼ばれる神経の膜があり、
カメラに例えると フィルムにあたります。
網膜はフィルムと違って場所によって感度に差があるのですが、
黄斑は網膜の中心部にあり、真ん中が少しへこんだ直径6ミリほどの領域で、
一番感度の高い場所です。黄斑で物の形、大きさ、色などの情報の大半を
識別しているといえます。


片目からやがて両目に

 黄斑が異常に老化して起きる病気が加齢黄斑変性です。
「滲出型」と「萎縮型」に分類され、滲出型は日本人に多くみられ、
進行が速いタイプです。
網膜の後ろにある脈絡膜から異常な新生血管が伸び、
そこからの出血やしみ出た水分が黄斑部の視細胞を傷めます。
その結果、見ようとする中心部分が見えづらくなり、ゆがんで 見えたり、
小さく見えたり、まん中が暗くなったりという症状が 起きます。
 症状は片目から始まりますが、やがて両目に及ぶ人が多く、
失明の原因にもなります。
片目に病気が起きても両目で見ると気付かないことがあります。
時々片目を隠して問題がないか自己チェックをお勧めします。
例えば片目を隠し、カレンダーの日にちを区切る縦線、横線のゆがみや、
見えにくい数字がないかなどのチェックが有用です。


最近増加傾向です

 加齢黄斑変性は、アメリカでは成人の失明原因の第1位です。
日本の第1位は緑内障ですが、食生活の欧米化、高齢者人口の増加のためか、
患者数が増加してきています。
2007年の推定患者数は約69万人といわれ、9年前に比べ倍増しています。
なぜ起こるかの原因はまだはっきりと分かっていません。
網膜の老化現象と考えられていますが、長年にわたって光を見ることに
関係しているのではないかと言われています。
また、喫煙、高血圧がこの病気を速める危険があると考えられています。
女性より男性に多くみられます。


その診断方法は

 診断は、網膜の下にある新生血管(脈絡膜新生血管)の部位、
大きさなどから判断して治療方法を決定します。
眼底検査のほか、眼底造影検査という腕の静脈から色素を注射し、
色素が心臓から眼球に送り出されてくる状態を、
眼底カメラで写真やビデオに記録することによって、
新生血管を捉えることができます。
また、光干渉断層計で網膜、脈絡膜の断面像を捉えることができ、
脈絡膜新生血管の部位、深さ、広がりを知ることができます。


新治療方法が次々と

 治療の主流はレーザー光凝固でしたが、脈絡膜新生血管をつぶす時に 、
同時に正常網膜にもダメージを与えてしまうために、
黄斑のまん中 近くに新生血管がある場合は治療ができませんでした。
04年に光線力学的療法(PDT)が認可され、光線過敏物質を注射によって
体内に入れて 脈絡膜新生血管に集まった時を目掛けてレーザーを照射し、
新生血管だけをつぶすという方法です。
09年に血管新生を止める薬物が認可され、4〜6週おきに
眼球に直接注射することで、視力回復効果も望めるようになりました。
12年11月には2カ月ごとに注射する新薬も承認されました。
しかし、重症の場合は黄斑の障害が残るため回復にも限界があります。


早期発見が最重要

 加齢黄斑変性はノーベル医学生理学賞を受けた山中伸弥教授が
開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)による初の臨床研究の対象に
予定され、注目を浴びています。
臨床研究は、他の治療法で効果がない重症の患者少数を対象に、
安全性の確認から開始されました。
 黄斑部のダメージが軽い早期に発見することによって、
重症化を予防することが重要です。
50歳以降の年1回の眼底検査によって、症状が出る前に起きる
目の中の変化を見つけることができます。
黄斑部に老廃物がたまることによってできる「ドルーゼン」が
初期変化と考えられています。
この段階なら、ビタミンA、C、Eと亜鉛が入ったサプリメントを
摂ることで加齢黄斑変性になりにくいという報告があります。
早期発見のために、片目での自己チェックをお勧めします。
2015.4.24 記