加齢黄斑変性
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
肝心なものは…
「肝心なものは目には見えないんだよ」
サン・テグジュペリは「星の王子さま」の中で、
私たちに大切なものは何かを教えてくれました。

最近は王子さまといえば「ハンカチ王子」の斉藤投手でしょうか。
私たち、旭川に住む者にとってみますと、「星の王子さま」は、
やはり旭川工業高校出身で、阪急、オリックスから阪神で活躍した
星野投手が思い出されます。
細身の左腕から繰り出される、スローボールの様な大きな曲がりの
カーブで強打者を翻弄した頭脳的かつ芸術的なピッチングと
端正な顔立ちが思い出されます。

今年の春の甲子園には旭川南高校が出場します。
段々と暖かくなり、春の訪れとともに球春近し。
最近は駒大苫小牧高校の大活躍のおかげで北海道が野球のメッカのように
感じられますし、プロ野球も北海道日本ハムの躍進で楽しみが増えました。
楽天田中投手のデビューも待ち遠しいですね。

「星の王子さま」から、大分脱線してしまいましたが、
今回は「肝心なものは目には見えないんだよ」といった
メルヘンティックな話ではなく、
「見ようとするところが、見えづらくなる」病気のお話になります。


読みにくい書きにくい
【おうはん】と呼ばれる場所が、目の一番奥にあります。
ワープロで【おうはん】と入力すると「凹版」と変換されてしまいますが、
目の一番奥の【おうはん】は「黄斑」と書きます。

医学辞書の入っていないワープロソフトでは、眼科の病気や用語が
うまく変換されず、おかしなことになりますが、一番有名な誤変換は
硝子体【しょうしたい】→焼死体 でしょうか。

硝子体とは、目の後側の大部分を占める生卵の白身のようなゲル状の
組織です。その組織の手術を硝子体手術、その部位の出血を硝子体出血と
呼びますが、焼死体手術、焼死体出血となりますと、何ともグロい話に
なってしまいます。

その他の誤変換もついでに:

その硝子体に濁りがでることによって、蚊が飛んでいるように感じる
症状、一般には黒いものが飛んで見えるで、おなじみの、
飛蚊症【ひぶんしょう】→非文章

また飛蚊症のときに、暗い所で光が走るように感じる
光視症【こうししょう】→考支障

この二つは面白い誤変換になっています。
無理やりこじつけると:

黒いものが飛ぶって言ったって、黒くない紐みたいのも飛んでいるし…
文章で上手く表現できないよ、ということで非文章。

寝ようと思って、部屋の電気を消したら何か横のほうで光が走っている
みたいに感じた。寝る前に考え事しようと思っていたのに…
考え事が出来ない位に気になって考支障。

          :おそまつでした。

ワープロも判断できないような、難解な用語が診察中に口をついて
出てしまうことがあります。
わかり易く説明しようと心がけているつもりですが、
わかりにくい時には、どうぞ遠慮なく聞き返して下さい。
お願いいたします。

「見ようとするところが見えづらくなる」黄斑の病気では
上のような難解語句でなくとも、本が読みにくい、
字が書きにくいといった症状がでてくることもあります。


加齢黄斑変性【かれい おうはん へんせい】

目の奥には網膜と呼ばれる神経の膜があり、カメラに例えますと
フィルムにあたります。
カメラのフィルムと違って、網膜は場所によって感度に差があるのですが、
黄斑は網膜の一番まん中にあり、一番感度の高い場所なのです。

黄斑でものの形、大きさ、色などの情報の大半を識別していると言えます。
黄斑に病気が生じますと、見ようとする中心部分が見えづらくなり
歪んで見えたり、小さく見えたり、まん中が暗くなったりという症状が
起きます。

片方の目に病気が起きても両目で見ると気づかないことがあります。
時々片目を隠して、問題がないか、自己チェックをお勧めします。

例えば片目を隠して、カレンダーの日にちを区切っている縦線、横線が
歪んでいたり、見えにくい数字がないかなどのチェックが有用かと
思います。


加齢黄斑変性はアメリカでは、成人の失明原因の第1位です(欧米かっ)。
わが国の失明原因の第1位は糖尿病網膜症ですが、食生活の欧米化、
高齢者人口の増加のためか、患者数が増加してきています。

加齢黄斑変性はなぜ起こるのか、その原因はまだはっきりとわかっていません。
網膜の老化現象と考えられていますが、長年にわたって光を見ることに
関係しているのではないかと言われています。
また、喫煙、高血圧がこの病気を速める危険があると考えられています。

網膜の黄斑に出血や腫れが起こることにより、光を感じるフィルムに歪みが
でることによって、見ようとするところが見えづらくなります。


眼底検査で加齢黄斑変性の診断をつけることはできますが、
加齢黄斑変性では網膜の下にある新生血管(脈絡膜新生血管)の部位、
大きさ等から、その治療方法を決定していくのです。

脈絡膜新生血管は眼底造影検査をすることによって、その部位、大きさを
確認することができます。
腕の静脈に色素を注射し、その色素が心臓から眼球に送り出されてくる
状態を、眼底カメラで写真やビデオとして記録することによって、
新生血管をとらえることができます。


現時点での、加齢黄斑変性の治療の主流は、
レーザー光凝固、
光線力学的療法(PDT)
です。

今まではレーザー光凝固が主流でしたが、脈絡膜新生血管をつぶす時に
同時に、正常網膜にもダメージを与えてしまうために、黄斑のまん中
近くに新生血管がある場合は治療ができませんでした。

最近はPDTが治療の主流になってきています。
平成16年に認可された新しい治療法です。
治療時に光線過敏物質を注射によって体内に入れて、光線過敏物質が
脈絡膜新生血管に集まった時をめがけてレーザーを照射し、
新生血管だけをつぶすという方法です。

患者さんは治療後もしばらくは光に当たらないように注意が必要で、
入院できる施設で、研修を受けた眼科医のみが施術できることに
なっています。
残念ながら当クリニックでは施術できませんので、旭川医大にご紹介
させていただいております。


また最近欧米では、薬物療法が新しい治療法として注目を浴びています。
この薬物療法は内服、点眼と違って、直接目に注射するという治療法です。
日本でも1、2年後には実施されるのではないかと思います。

いずれにしましても、早期発見、早期治療が重要な病気ですので
片目での自己チェックをお勧めいたします。

2007.3.1発行 優しい眼科クリニック第40号 に掲載するために執筆