弱 視
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
今回は、お子さんの目の病気であります「弱視」について
お話させていただきます。
弱視
弱視という言葉には二つの意味があり、
一つは「医学的弱視」
もう一つが「社会的弱視」です。

眼科で弱視といいますと「医学的弱視」のことなのですが、
親御さんは「社会的弱視」と受け取って、
行き違いが起こってしまうことがあり、
言葉足らずを反省することがあります。

「医学的弱視」とは、網膜や視神経に異常がないにもかかわらず、
視力の成長期において、角膜から網膜の前までに何らかの異常があり、
視力の発達が妨げられて、良い視力が得られないことをいいます。

一方、「社会的弱視」とは、原因を問わず両眼での矯正視力(一番
合っている眼鏡をかけた視力)が0.04〜0.3に低下していたり、
視野が極端に狭くなっている状態のことです。

眼科でいう弱視「医学的弱視」は、適切な時期に適切な治療をすると
治すことのできる弱視なのです。


どうして弱視になっちゃうの?

生まれたばかりの赤ちゃんの目は、あまりよく見えていないと
考えられています。
だんだんと目の前の手が動くのがわかるようになり、
見つめるようになり、
生後2ヵ月くらいで人や手の動きを追いかけて見るようになってきます。

そして徐々に視力が上がってきて、6〜7歳くらいまでに
ほぼ大人の視力になると考えられています。

生まれつき視力が備わっているわけではなく、
乳幼児期からものを見て、網膜にピントのあった像を結ぶ刺激を
繰り返すうちに視力を獲得することができるわけです。

この視力の発育に重要な時期に、何らかの原因があり、
視力の発達が途中で止まってしまい、
眼鏡をかけても視力が出ない状態を弱視といいます。


私は弱視の説明の時、
『お子さんの目にまだ、スイッチが入っていない状態です』
と伝えています。

赤ちゃんの目は、作りは問題なくても働きの点から考えますと、
まだ未完成品です。

赤ちゃんの目にしっかりとピントのあった像が結ぶことが、
目の働きにスイッチを入れるというイメージです。

目の働きにスイッチが入って、初めて目が完成するわけです。


弱視の種類として、

○強い遠視、乱視のために目にしっかりとピントのあった像を
 結ぶことができない屈折異常弱視

○左右の目の度数に差が大きい場合、度数の強い方の目に
 ピントのあった像を結ぶことができない不同視弱視

○斜視のために、視線がずれてしまう方の目に
 ピントのあった像を結ぶことができない斜視弱視

○先天白内障、眼瞼下垂などの病気が原因となり、
 目にピントの合った像を結ぶことができない形態覚遮断弱視、
 眼帯をしたことが原因のものも含まれます。

の大きく4つに分けられます。


上記の弱視のうち、不同視弱視の発見が遅れることが
多く見られます。
見た目には何の異常もありませんし、片方の目の視力が良いので、
お子さんの行動から発見されることが少ないのです。

以前は就学時検診で初めて弱視が発見されることが多く、
治療が上手く行かない場合もありました。

平成2年10月からは、3歳時健診に視力検査が加わりましたので、
平成生まれのお子さんは、3歳時健診で視力検査をご自宅で
行うようになりました。
それでも、小学校に入ってから、弱視が発見されるお子さんも
いらっしゃいます。

3歳になりましたら、ほとんどのお子さんの視力検査ができます。
ご心配でしたら、是非ご相談ください。


弱視の治療
6〜7歳くらいまでに、ほぼ大人の視力になると考えられていますので、
その前に治療を行うことが効果的です。

3歳から治療した不同視弱視では、1年で75%が矯正視力0.7以上に
回復するというデータが発表されています。
一方、入学後に治療を開始した場合は、長い治療期間が必要になって
しまうこともあります。

しかし、成長に個人差があるように治療効果にも個人差がありますので、
あきらめずに頑張って治療を受けていただいております。

入学後から治療を始める場合は、本人が治療の必要性を自覚できることから、
積極的に取り組めるという利点もあります。

屈折異常弱視、不同視弱視の場合は、まず眼鏡をかけてもらうことが、
治療の第一段階です。
眼鏡をかけて、しっかりとピントのあった像を結ぶことが大切です。
でも、この時点ではピントの合った像を結ばせても、本人ははっきり
見えません。
近視の眼鏡と違って、かけた時点でははっきり見える眼鏡ではないのです。
頑張って眼鏡をかけているうちに目にスイッチが入って
徐々に視力が上がってきます。

不同視弱視の場合は、眼鏡に十分慣れた上で、「健眼遮蔽法」を行うことが
あります。
これは、良い方の目にアイパッチをして、弱視眼のみを使ってもらう訓練です。
良い方の目の視力が落ちていないことを確認しながら弱視眼の視力が
伸びてくるのを待つわけです。

弱視の治療はすぐに結果が出るわけではなく、
ご本人、親御さんの根気と協力が必要です。

『おたまじゃくしから、カエルになるように頑張ろう』
って、お子さんに言ってみようとも思いましたが、きっと
『嫌だー、気持ち悪い、カエルになんてなりたくないー』
って言われるだろうな、と思って、
この例え話は封印しています。

2006.10.2発行 優しい眼科クリニック第35号 に掲載するために執筆