コンタクトレンズの定期検査
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
コンタクトレンズの定期検査
コンタクトレンズのお話の2回目ですが、
今回は定期検査の重要性について、お話させていただきます。

調子良いんだから、検査なんて必要ないっしょ
定期検査を受けていない方は、きっとこう思っていることと想像します。
調子が良ければ問題ないのなら、良いのですが、
調子が良くても問題のあることが、あるんです。

特にソフトコンタクトレンズ(SCL)をお使いの方は、注意が必要なんです。
そこで、CL の種類について、ご説明します。


CL の種類とその特徴

1.ソフトコンタクトレンズ
(1)1日使い捨てレンズ

1日使ったら捨ててしまいますので、レンズに汚れがたまる心配が
ありません。また、洗浄・消毒などのケアが不要です。
アレルギー性結膜炎にも対応しやすいという利点があります。
ただし、毎日使う場合は、コスト高になってしまいます。
(2)定期交換型使い捨てレンズ
1週間、2週間、1ヵ月で交換するタイプのレンズです。
このうち1週間型は1週間、目につけたままのタイプのレンズで、
トラブルが多く、お勧めしていません。
定期交換型は洗浄・消毒などのケアが容易で、1日使い捨てよりも
コスト面で有利です。
アレルギー性結膜炎の強い方は使用できません。
(3)通常のSCL(コンベンショナルレンズ)
洗浄・消毒などのケアが面倒です。
どうしても汚れてしまいますので、なるべく早めの交換が必要です。
やはりアレルギー性結膜炎の強い方には使えません。
2.酸素透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)
安全性には、最も優れています。ただし、慣れるまでに時間がかかり、
異物感のため装用できない方もいらっしゃいます。
近視度数の強い方、1日の装用時間の長い方に適しています。

角膜の栄養は涙からの酸素です。
私たちの身体に必要なものの一つに酸素があります。全身の臓器は、
血液によって運ばれる酸素を消費しています。
角膜は物を見るためのレンズとして働いていますので、
透明でなければなりません。そのために、角膜には血管がなく、
角膜の栄養の酸素は涙から補給されているのです。

栄養失調は病気のもとです。

栄養状態が悪いと病気になったり、感染症にかかったりするように、
角膜にも酸素不足が起こると、色々な障害が生じます。

角膜の表面の細胞(上皮細胞)は、角膜の周辺部の幹細胞で作られ、
細胞分裂を繰り返し、常に新しい細胞が生まれています。
酸素不足が起こりますと、細胞分裂能が低下し、角膜上皮細胞に
障害が起こることになります。
これが、いわゆる角膜の傷です。CLをしている方に、
「角膜に傷がありますね」と言うと、
「こすったからかなあ?」
「ゴミが入ったのかなあ」とおっしゃいますが、
実は酸素不足による傷が最も多いと思います。
そして、この角膜の傷は、SCLをしている方では、ほとんど自覚症状が
ありません。
RGPCLの場合は角膜に傷がつきますと、ゴロゴロ感(異物感)や
痛みという自覚症状を伴いますので、大事に至ることが少ないと思います。

大事とは、角膜にばい菌がつくことです。
角膜上皮は角膜をばい菌から守るバリヤーの働きもしています。
目の表面はばい菌の繁殖し易い場所ですので、感染する危険も多いのです。
角膜感染症は、最悪の場合、失明にもつながるあなどれない疾患です。
自覚症状がなくても、定期検査が必要なのです。

また、SCLの場合はRGPCLに比べてサイズが大きく、角膜全体を覆って
しまいますので、角膜に涙からの酸素が届きにくく、またレンズと
角膜の間の涙の交換も少ないため、長時間装用やレンズが汚れている場合
には、酸素不足に陥りやすい訳です。


慢性的な角膜の酸素不足を示すサインは、角膜周辺部の新生血管の侵入
(角膜パンヌス)です。本来血管のない組織の角膜が、酸素不足に陥り
苦しくなりますと、角膜周辺から中央に向かって血管が伸びてきます。
診察室ではモニターで示しながら、
「白目の血管が黒目に入って来てますよ」
と注意を促していますが、もちろん、これも自覚症状がありません。

さらに酸素不足が長期間に及びますと、角膜の内側の細胞である内皮細胞に
障害が出てきます。内皮細胞は角膜の水分調節を司っており、内皮細胞の
働きのおかげで、角膜は透明性を維持することができるのです。
内皮細胞は細胞分裂をせず、障害を受けると細胞の数が減り、周囲の細胞と
合わさって大きくなります。つまり内皮細胞に大きい細胞が見られるように
なりますと、角膜の慢性的な酸素不足は深刻な状態になっていると判断
できます。しかし、これにも自覚症状はありません。

現在の医学では、失われた内皮細胞を取り戻すことはできませんので、
将来角膜が濁ってくる危険性があるのです。


CLから角膜を守るために
正しいフィッティングのCLで、酸素透過性の優れたレンズを、正しい
使用法で装用しなければなりません。

SCLの場合は、1日12時間をメドに装用をお勧めします。
洗浄・消毒を毎日行い、古くなり劣化したレンズは、
取り替えをお勧めします。

自覚症状がなくても、角膜に問題が起きていないか、
自分の使い方が目に負担になっていないかを、
検診で確認して下さい。

2004.8.2発行 優しい眼科クリニック第9号 に掲載するために執筆