ぶどう膜炎
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
今回は、眼科の病気の中でもあまり聞き慣れないものだと
思いますが「ぶどう膜炎」についてのお話をしようと思います。
ぶどう膜炎
ぶどう膜とは、虹彩・毛様体・脈絡膜の3つをあわせた総称です。
眼球全体を覆う非常に血流の豊富な組織で、
目に栄養を与えたり、ピントを合わせたりする働きをつかさどっています。

ぶどう膜炎とは、そのぶどう膜に炎症が起きるという病気です。
と、言いましても分かりにくい話だと思いますので…

それでは毎度のことながら、ものを見る仕組みから
復習していきましょう。


ものを見る仕組みから

人はどのような仕組みでものを見ているのでしょうか。
ものを見る仕組みを考えながら、ぶどう膜の働きについて
考えてみましょう。

目の働きや構造はよくカメラに例えられます。
黒目(角膜)のすぐ後ろに透けて見えるいわゆる茶目を虹彩といい、
これは目の中に入ってくる光の量を調節する働きがあり、
カメラのしぼりにあたります。

この虹彩の後ろに水晶体という部分があります。
水晶体はカメラのレンズと同じで、私達が見ようとするものを正しく、
網膜(カメラのフィルムにあたる部分)に焦点を結ばせる働きがあります。

この水晶体のピント合わせに虹彩から続く毛様体という部分が
活躍しており、さらに毛様体で作られる房水という液体が
目の圧力(眼圧)を一定に保ち、さらに水晶体に栄養を与えるという
重要な働きをしています。

網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、
私達は、初めてものを見ることができるのです。
脈絡膜は身体の中でも血管の豊富な部分で網膜の裏側から栄養を
与えてくれています。
また、脈絡膜は色素の多い組織で、暗室効果を作り、
網膜に鮮明な像を結ぶ助けをしています。

このように虹彩・毛様体・脈絡膜からなるぶどう膜は
ものを見るために重要な働きをしてくれています。


ぶどう膜炎の原因

ぶどう膜炎は、そのぶどう膜に炎症が起きるという病気です。

ぶどう膜炎の原因は、大きく3つに分けて考えられています。

1.外因性…細菌やウイルス、カビなどの感染

2.内因性…免疫異常が主なもの
        原田病、関節炎合併例、サルコイドーシスなど

3.原因不明…ベーチェット病など


ぶどう膜炎という診断は、眼科で下されますが、
それは眼症状を総称したもので、何が原因でぶどう膜炎が
生じているかの確定診断をつける必要があります。

確定診断のためには、眼科的検査を行うことはもちろん、
血液検査、胸部レントゲン検査、ツベルクリン反応などのほか、
場合によっては髄液検査、生検といって炎症のある部位を一部採取して
病理学的検査に提出することもあります。

サルコイドーシスを疑う場合は、呼吸器内科の先生に相談したり、
ベーチェット病を疑う場合は皮膚科の先生に診察をお願いしたりする
必要がでてきます。

色んな検査をしても、その原因の確定診断がつかない、
いわゆる原因不明のぶどう膜炎が実は一番多いのです。


ぶどう膜炎の症状

それでは、ぶどう膜炎の症状には、一体どんなものがあるのでしょうか?
どんな症状が出たら眼科を受診すべきなのでしょうか。

   目が赤い
   目がゴロゴロする
   目が痛い
   まぶしい
   涙っぽい
   かすんで見える
   黒いものが飛んで見える
   霧がかかったように見える
   歪んで見える
   ものが小さく見える

といった症状が、ぶどう膜炎の代表的な症状と言えます。
しかし、これらの症状はぶどう膜炎に特有な症状ではなく、
他の目の病気でも起こりうる症状ですので、これがあれば即ぶどう膜炎
という訳ではないのです。

目の前の方の炎症(虹彩毛様体炎)であれば、
目が赤い、ゴロゴロする、痛い、まぶしい、涙っぽい、かすんで見える
と言った症状が起きやすいのです。

目の奥の方の炎症(網脈絡膜炎)では、脈絡膜からさらに内側にある
網膜や硝子体と呼ばれるゼリー状の物質が濁ることにより、
視力低下、目のかすみ、飛蚊症(黒いものが飛んで見える)、
歪んで見える、小さく見えるなどの症状が現れます。

症状が進行してからでは、視機能に障害を起こすこともありますので、
速やかに眼科を受診することをお勧めします。


ぶどう膜炎の治療
ぶどう膜炎の治療は、どうするのでしょうか。

病気の治療の基本は、原因に対しての根治療法です。
しかし、ぶどう膜炎は原因不明のことも多く、
炎症を抑えて、視力障害を起こす合併症を食い止めるという
対症療法が主体になってしまいます。

虹彩毛様体炎に対しては、点眼薬が有効です。
特に炎症を抑えるステロイド点眼薬が効きます。
虹彩が水晶体と癒着するのを防ぐために散瞳剤を用いることがあります。

網脈絡膜炎のときには、ステロイド薬や免疫抑制剤の全身投与が
必要になってきます。
目の奥の方の炎症を抑えるためには、点眼薬では十分な量の薬が
届かないと考えられるからです。

ステロイド薬は炎症を抑える力が非常に強く、頼りになる薬です。
効果が強い反面、副作用もありますので、症状に合わせて、
副作用に注意しながら薬の量を加減する必要があります。

全身投与にも、内服、点滴注射と言う方法があり、
投与しなければならない量が多い場合は点滴注射が必要となります。
この場合は、入院治療が必要と考えられますので、
入院できる施設に紹介させていただきます。

ぶどう膜炎は、お薬による治療ですぐ治らず、治療が長引くことが
あります。ステロイド薬を使っていることも多いですから、
自己判断で通院治療を止めず、視力障害を残さないよう

2006.11.1発行 優しい眼科クリニック第36号 に掲載するために執筆