雪目
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
2月
1年の中でも、朝の気温が最も下がる季節になりましたね。
私は小学校入学のときは帯広に住んでいたのですが、
3年生の時に陸別町という十勝の中でも更に田舎に引っ越し、
中学1年の夏までの4年間を過ごしました。

そこは冬は非常にシバれる町で当時は、朝の通学はマイナス30℃以下と
いうこともあったと記憶しています。
学校に着いた時には、鼻水が凍っているということも日常茶飯事でした
ので、誰もつっこんだり、ボケたりもしませんでした。


ご存知の方もお出でになると思いますが、家の暖房は
糠(ぬか)ストーブという、おがくずを燃料にするストーブでした。
バケツのお化けみたいなものにおがくずを入れておいて、
ストーブの上にセットしておき、下の方から燃えていきますので、
タイミングによっては下の方に空洞ができてしまい、
ある時ドサッとおがくずが落ちて、ストーブの周りにいると
舞ったおがくずをかぶってしまうと言うハラハラドキドキの
ストーブでした。
でも、ストーブから離れると非常に寒いので、
ストーブの近くに陣取っておいて、怪しいなと思った時には、
お化けバケツの横っ腹をたたいて、おかくずを落とす、なんてことを
やっていたことを思い出します。


スケート好きー
そんな寒い町で育った私ですが、寒さには滅法弱い軟弱派なのです。
「子どもは風の子」といいますが、うちの子も寒い中、毎晩のように
スキーに出かけています。

私は、と言えば、全くスキーは駄目なんです。
スケート王国十勝の出身ですから、小学校時代の体育はスケート授業で、
スピードスケート。
中学校ではアイスホッケーが体育授業でした。

特に陸別町はスケートに気合が入っていました。
それもそのはず、当時の女子スピードスケートのオリンピック候補選手が
陸別町出身だったのです。
陸別町の郷土の誇り、長屋真紀子さんがその方です。
昭和51年(札幌オリンピックの次の)インスブルックオリンピックに
出場し、昭和55年レークプラシッドオリンピックでは、女子500mで
見事5位入賞を果たした実績をお持ちです。

その後、橋本聖子さん、岡崎朋美さんという素晴らしい実績を残した
選手がいらっしゃいますが、当時の私たちは長屋真紀子さんの力強い
滑りに熱狂したものでした。

なんて書いてきますと、私もスケートに情熱を燃やし、
良い記録を出していたかのようではありますが、
世の中そんなに甘いものではありませんでした。
なにせ、当時の私は背が低く(当時だけでなく、現在も高くはないですが)
今とは比べものにならないくらい痩せておりましたので、
力強い滑りができず、特に向い風になるといくら頑張っても
なかなか前に進まないという悲しい結果に終わっていました。


前置きが長過ぎましたが…

いつになったら目の話になるんだ、という感じですが…

スケートやスキーなどのウインタースポーツでも、
夏の日焼けのように雪焼けすることがありますが、
ウインタースポーツに関連する目の病気として
「雪目」があります(やっと目の話になりましたね)。

天気の良い日に、戸外でスケートやスキーをした夜になって、
両目が赤くなり、ゴロゴロして涙が出て、痛くなることがあります。
これが一般的に言う「雪目」です。

雪眼炎(せつがんえん)とも言いますが、
雪が直接悪さをしているわけではなく、紫外線が直接または雪面で
反射して目に当たることが、その原因です。
目の表面の敏感な角膜が紫外線の作用によってただれて、
細かい傷がつくことによって、激しい痛みを引き起こします。

ウインタースポーツを楽しむ時には目にも紫外線対策をお忘れなく。
ゴーグルやサングラスで冬の強い紫外線から大切な目を守りましょう。


紫外線による角膜炎

「雪目」だけでなく、紫外線によって角膜炎を起こす原因が
他にもあります。
有名なものとしては、電気溶接をしていた人が夜中になってから、
両目に激痛が生じるという電気性眼炎です。
紫外線による角膜炎が雪目もそうですが、通常両眼に生じ、
左右大体同じ時間に同じように痛くなるという特徴があります。
ただし、溶接などの原因となることをしてから、痛みがでるまでに
タイムラグがありますので、本人は原因と結びつかないと考える
ことがあります。


本当にあった怖い(人の)話

実際にあった話としまして、救急当番の夜中の1時くらいに
両眼が痛くて、寝ていられないと友人に手を引かれて
両目をタオルでおさえて受診した20代の男性がいました。

両眼の角膜上皮が全面に渡って傷ついており、
白目も充血のため真っ赤になっており、
涙がひどく出ている状況でした。

所見からは紫外線による角膜炎が考えられましたが、
原因を特定できなければ、確定診断になりません。

私「溶接をしていませんでしたか?」

患者さん「してない!」

私「殺菌灯を見ませんでしたか?」

患者さん「見てない!」

患者さん「うるさいこと言ってないで、早く治せよ、コラア」

と、脅かされてしまいました。

怒りたくなるほどの痛みということで、とりあえず納得して
治療してから、再び尋ねてみましたら、
その人のすぐ横で電気溶接をしていて、その人は遮光用メガネをせずに
溶接の光を見てしまっていたようです。


溶接光や殺菌灯には、太陽光に含まれる紫外線より
波長の短い260-290ナノメートルの波長の紫外線が多く
含まれており、角膜に対する毒性がより強いのです。

目の中にゴミが入ったり、目にモノが当たって角膜に傷がついた場合は、
目を閉じていれば、痛みや異物感は治まることが多いのですが、
電気性眼炎の場合は、目を閉じていたとしても目の痛みが治まりませんので、
眠れないことになってしまいます。

といいますと、非常に怖い病気のようではありますが、
遮光用メガネをかけることによって確実に予防できますので、
ご安心を。

2007.2.1発行 優しい眼科クリニック第39号 に掲載するために執筆