乱視
院長 今野 優 医学博士
昭和38年9月11日 生
平成元年 5月医師免許(第321523号)
平成 8年 9月旭川医科大学学位記(第240号)
平成 8年10月日本眼科学会眼科専門医(第8303号)
乱視
眼鏡屋さんで「近視だけでなく、乱視が少しありますね」と
言われて、ドキッとしたことのある方は多いのではないでしょうか。
かくいう私もその一人です。

小学校5年生から眼鏡をかけています。
最初の眼鏡は近視の眼鏡だったのですが、次に眼鏡が合わなくなった時には
「乱視がありますね」と言われました。

何のことだか、よくわからないものの
「何だか面倒なことに生っているのではないか…」と少し心配しました。

とは、言いましても小さい頃から楽天家でしたので、
眼鏡屋さんを出た時には、良く見える眼鏡に変わったことに喜んでいました。

子供なりに
「近視で遠くが見えにくいのだから、遠視は近くが見えにくいのだろうか…
じゃあ、乱視は乱れて見えるって、どんなんだろう…」
と考えてみましたが、わからないまま医学生になりました。

習ってみると、「なるほどね」という感じで、「乱視恐れるに足りず」と
いうことが判明しました。
という訳で、今回の通信は「乱視」のお話をしてみます。


物を見る仕組み

人はどのような仕組みでものを見ているのでしょうか。
ものを見る仕組みを考えながら、乱視について考えてみましょう。

目の働きや構造はよくカメラに例えられます。
黒目(角膜)のすぐ後ろに透けて見えるいわゆる茶目は虹彩といい、
これは目の中に入ってくる光の量を調節する働きがあり、カメラのしぼりに
あたります。この虹彩の後ろに水晶体という部分があります。
水晶体はカメラのレンズと同じで、私達が見ようとするものを正しく、
網膜(カメラのフィルムにあたる部分)に焦点を結ばせる働きがあります。
網膜に映った像が視神経を通して脳に伝えられ、私達は、初めて
ものを見ることができるのです。


レンズの役割

カメラのレンズの働きをするのが、水晶体です。
若いうちは水晶体は弾力があり、近く・遠くを見る時に、
水晶体が厚みをかえてピント合わせをしてくれます。
オートフォーカスの精巧なカメラということになります。
(水晶体の弾力性が衰えるために、近くにピントを合わせにくくなるのが、
いわゆる老眼なのです。)

水晶体のレンズの強さは眼球全体のレンズの強さの3分の1で、
残りの3分の2の強さは角膜が担っています。

つまり、角膜と水晶体の二つがレンズの働きをしています。


乱視とは

角膜と水晶体は完全な球面ではなく、縦横の丸みの大きさが異なっています。
この縦横のカーブに差があることを乱視と言っています。

角膜のカーブについて考えてみますと、角膜は野球ボールのように
まん丸ではなく、ラグビーボールを横にしたように縦のカーブが横のカーブに
比べて強い場合が多く、このような乱視を直乱視と言っています。

逆にラグビーボールを縦にしたような乱視を倒乱視(とうりゃんせ、では
ございません)と言っています。

多かれ少なかれ、ほとんどの方に乱視は見られますが、眼鏡による矯正が
必要かどうかは、その程度の差によるわけです。
ですので、「乱視がありますね」と言われても、
「面倒なことになっている」わけではありませんので、ご安心を。



上が正視(近視も遠視も乱視もない目)、
下が直乱視の模式図です。

正視では縦も横も焦点が網膜で結ぶので、はっきりとした像が得られます。

一方、直乱視では、縦方向の焦点が網膜より手前にあるため、網膜で
はっきりした像がえられません。

乱視の大きさや方向(軸)は、検査により数値として出てきますので、
乱視が気になる方は受診の際にお尋ね下さい。

自覚的には、乱視表により検出できます。
放射線指標を片目ずつ見た場合に、濃く見える(逆に薄く見える)方向が
あれば、乱視の可能性があります。


乱視の矯正

では、乱視の矯正が必要な場合はどうするのでしょうか。

眼鏡では、円柱レンズという特定の軸方向に度数の入っているレンズで
矯正することが可能です。

極端に強い乱視でなければ、眼鏡で矯正できると思います。


乱視用のコンタクトレンズ

乱視の主な原因は角膜乱視ですので、角膜に沿って載る通常の
ソフトレンズでは、上手く矯正できないことがあります。

一方ハードレンズは、角膜の上に仮の球面角膜を作ることができるため、
乱視の矯正に向いています。

以前でしたら、乱視と言ったらハードレンズと考えられていましたが、
最近では乱視用のソフトレンズ(トーリックレンズ)も改良され、
現在では1日使い捨て、2週間・1ヵ月定期交換型のトーリックレンズも
ラインアップされています。

トーリックレンズは乱視を矯正するために、軸が安定しなければ
良好な矯正効果を得ることができません。
その人の角膜の乱視軸で安定するような回転防止機構が考えられています。

トーリックレンズは通常のソフトレンズに比べ、お値段が高いという
問題点がありましたが、メルスプランの「マンスウエアトーリック」は、
今までの「マンスウエア」と同じ月会費1890円でお使いいただけますので、
費用面の問題は解決されたと考えております。

また、他のトーリックレンズから変更された方のお話では、
視力も安定しており、1ヵ月交換で汚れも付きにくいと、評判はすこぶる
よろしいようです。

ただ、乱視は人によって状態が違うため、乱視度数や軸、近視の度数から
判断して、ハードレンズをお勧めすることもありますので、
是非ご相談してください。

2006.3.1発行 優しい眼科クリニック第28号 に掲載するために執筆